「便所飯」に端を発する、現代の若者が抱える歪な心理とは?
あなたは、一人っきりで、ランチを食べることができますか?
そんなの当たり前だという方は、いま、世間を賑わせている「便所飯」現象について、どう思いますか?
「便所飯」とは、「一人でランチを食べる姿を他人に目撃されると、『あいつは友達のいない、劣った人間だ』と思われる……と危惧し、トイレの個室に逃げ込み、そこで食事をする」行為のことです。そもそも人目を避けて行われるため、大っぴらに問題になることではありません。単なる都市伝説と信じている人もいます。しかし、「便所飯」を続ける人は、確実に存在します。表に出ない問題だからこそ、事態はさらに深刻になっていくのです。どこかで、それを止めなければなりません。
「ランチメイト症候群」という言葉なら、ご存じの方が多いのではないでしょうか。「便所飯」行為は、その「ランチメイト症候群」の進化型といえるでしょう。そこにはれっきとした「歪んだ心」が存在します。
彼らはなぜ、トイレに隠れて「便所飯」をしてしまうのでしょうか? なぜ、「友達がいない」と、「劣った人間」に見られる、と不安になってしまうのでしょうか? なぜ、そこまで「他人の目」が気になってしまうのでしょうか?
精神科医であり、学校教育問題のエキスパートでもある和田秀樹氏の新刊『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』(祥伝社刊)では、まさにその「便所飯」騒動をはじめとし、より広く深い視点で、若者の心理状態を鋭く洞察しています。
著者は同書で、一見、異常に見える「便所飯」行動の裏に存在する、確固たる要因を見事に解明しました。さらには、「便所飯」にまで至らなくても、その予備軍は大勢いること、それで多くの人間が苦しんでいると訴えます。その現状自体が由々しきことであり、これが進むと日本の経済も停滞したまま回復は望めない、と警鐘を鳴らしています。
著者が見事に解き明かした、「便所飯」行動に走る理由とは……?
驚くべきことに、便所飯だけではなく、最近の若者の心理状態が、著者の推察によって次から次へと露わになっています。
「なぜ、最近の若者は贅沢をしたがらないのか?」「なぜ、夢を持たないのか?」「なぜ、何十年も後の、老後のことを気にするのか?」――現代の日本が抱える諸問題の原因、さらに、それらをいかに対処すべきか、著者は明快に著わしています。
日本という国をより発展させるためには、どうすれば良いのか……?
その答えも、具体的に述べられています。
どうしても自分に自信が持てない方、日々の人づきあいに疲れている方、「最近の若者の考えていることがわからなくて困っている」方、そしてもちろん、「便所飯」がやめられなくて困っている方……悩む前に、この一冊をお読みください。
和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。灘中・高を経て東京大学医学部卒、東京大学付属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、日本初の心理学ビジネスのシンクタンク、ヒデキ・ワダ・インスティテュートを設立し、代表に就任。志望校別受験勉強法の通信教育『緑鐡受験指導ゼミナール主宰』。
国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。専門は、老年精神医学、精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学。
著書は『ちょっとした習慣術』シリーズをはじめ、『学力崩壊』、『大人のための勉強法』、『受験は要領』、『嫉妬学』、『医者を目指す君たちへ』、『富裕層が日本をダメにした!』、『新受験技法 東大合格の極意』、『人は「感情」から老化する』、『あなたはシゾフレ人間かメランコ人間か』など多数にわたる。なかでも、『受験は要領』上梓以来、「受験界のカリスマ」、「受験勉強法の神様」との名を恣にする。
心理学、教育問題、老人問題、人材開発、大学受験などのフィールドを中心に、テレビ、ラジオ、雑誌でも、精力的に活動中。2007年、初監督映画作品『受験のシンデレラ』で、モナコ国際映画祭最優秀作品賞受賞。2008年4月、保護者、教育者向け会員組織『学力向上!の会』を発足させた。
第1章 「便所飯」現象は、何を物語るのか
なぜ、よりにもよって「トイレで食事」?
「便所飯」行為を信じられない・信じたくない人たち
「行き過ぎた平等主義」が生んだ、運動会の「手をつないでゴール」
「一人で食事する奴」=「友達がいない奴」=「大きな恥」
「一緒に昼食を食べる相手=ランチメイト」の存在理由
アメリカの男性の最大の恐怖とは?
OLを襲う「ひとりぼっち恐怖」
「脇役」不在の舞台、「学級委員長」不在のクラス
友達のいる子が「いい子」で、友達がいない子は「劣った子」
「新学力観」――何よりも、教師の前では「いい子」でいなければならない
友達をつくらなければならない母親たち
「公園デビュー世代」が生んだ、「ランチメイト症候群世代」
第2章
「スクールカースト」――教室に「身分制度」が生まれた
本来、日本人は「和」を重んじない民族だった
なぜ女性のほうが「友達がいる」と見せたがるのか
コミュニケーション能力の有無で、クラスでの「序列」が固定化される
「仲間はずれ」型のいじめは誰にも相談できない
いまのいじめの根底に流れる「村八分」意識
「我が道を行く」タイプの人間が多く住む地域の特徴とは?
スクールカースト型のいじめが起きやすい地域・起きにくい地域の明らかな違い
「逃げられない」環境が、スクールカースト化を増長する
「一軍の座」から転げ落ちた社会人が、這い上がれない理由とは
目的や課題のないグループほど、集団心理に流されてしまう
スケープゴートを叩き、スクールカーストを形成する集団とは
順位をつけるほうが、子供には幸せだ
「みんなと同じ」で満足するシゾフレ人間と、それでは嫌なメランコ人間
増殖した「シゾフレ世代」が、さらなる「シゾフレ人間」をつくる
第3章
本音を言えない若者は「真の自己」を失っている
「お芝居」で人づきあいを続けると、根本的な「人間不信」に陥る
ランチメイトとの「寒~い」会話
ネット上だけの「つながり」で、深い人間関係は生まれるのか?
希薄な人間関係で充分、それ以上は求めない
日本人の「甘えの構造」――「甘えられない人」の病理を解明する
健全な心の持ち主なら「ほどほどに」甘え合うことができる
「真の自己」と「偽りの自己」との均衡
「赤提灯の愚痴」は、立派なカウンセリング行為
実生活と折り合いをつけるための新しい手段――「同調型引きこもり」とは?
酒と無縁の日常を送る若者たち
本音が許されるはずの「家庭」ですら、本音を吐けない理由
親の役割は、「本音」と「建前」の使い分けを教えること
もはや死語? 「親友」という言葉
「人間性」を大事にしすぎたら、社会が壊れた
大きな誤認――「IQよりEQが大事」ではない
日本社会を覆う「人間性至上主義」の謎
「人間性」をトレーニングする方法など、どこにあるのか
「マニュアル的な挨拶」も、「道徳のペーパーテスト」も、ないよりはマシ
人間の「腹の中」のことなんて、心理学者にもわからない
「性能のいい子」が評価された、第二次産業時代
なぜ、いまの子供は「スペックが良くてもダメ人間」とされるのか
「性能」が良かったから、ファンに支持された朝青龍
子供たちは「人間性より、実力で評価される社会」にぶちあたる
企業は圧倒的に「学歴」をアテにしている
子供たちの人間性を劣化させたのは、学校教育の仕業だ
「嫌われる」方法だけは知っている
歪(いびつ)な存在――人気者なのに、親友のいない子供たち
「露悪的な本音」が、真の姿を包み隠してくれる
かつては「クラスの人気者」だった二人が犯した重罪
「人間性至上主義」教育がもたらした最大の弊害
「人気がない」=「最低の人間」
第5章
若者たちは、なぜ未来に希望が持てないのか
大学が高校化している? クラスにしがみつく意識
入社後も、学生時代の癖を引きずるOLたち
「深い関係」になれるのは、同性の友達より異性の恋人という錯覚
「婚活」が、いとも安直に、システマチックに進む理由
「老後が不安だから」お金を遣わない二〇代
「異様に心配性」な二〇代と「異様に楽観的」なバブル世代
格差社会のいまだからこそ、夢も希望も持てるはずだ
若者が贅沢しないのは、贅沢を知らないからだ
子供たちの「絶望」を産んだ最大の元凶とは?
野心がなく現実的な若者たちが、国の経済成長を阻害する
「物質的な豊かさ」と「精神的な豊かさ」とは両立できる
「欲」を持たなくなったのは、「みんなと同じ」で満足だから
「個性を重視する教育」が、経済発展にもつながる
あなたを知らない人が、あなたを否定できるはずがない
ご心配なく。他人はそこまであなたに関心がない
[おわりに]