元自衛官・元外交官が日本の防衛・外交を激論!
昨年12月26日に発足した第二次安倍内閣ですが、この内閣で最重要課題の一つに挙げられるのが日米関係です。民主党政権が揺るがせてしまったアメリカとの関係を今後どのような方向に持っていくべきかということに大きな注目が集まっています。
本書は元外交官(駐レバノン特命全権大使)でリベラル・護憲派論客として知られる天木直人氏と、元航空幕僚長で保守路線を貫く田母神俊雄氏が、今後の自主防衛策と日本外交が進むべき道を論じる一冊。言ってみれば右翼と左翼、思想や主張がまったく違う両氏ですが、共通しているのは日本は対米追従路線、つまりアメリカのいいなりである現状から脱却すべきという主張です。
そこには、反骨の外交官・自衛官としてのキャリアの積み重ねが反映しているのです。
自衛官だった田母神氏は防衛庁と自衛隊の対米追従を指摘しています。
同氏によると、アメリカから購入する装備品の価格はあってないようなもので、日本は世界一高い価格で購入させられているといいます。
それならわざわざアメリカから買わず、日本の技術力を生かして国内生産すればいいはず。しかし、アメリカはそれを許しておらず、日本の防衛産業の自立をさまたげているばかりか、私たちの税金がアメリカの軍需企業に流れているという現状を作りだしているのです。さらに、兵器やミサイルに組み込まれているシステムソフトまでアメリカに握られていることも指摘しています。氏は、アメリカと日本は親子関係にあり、今まさに、日本の親離れが問われていると主張しています。
防衛だけではありません。天木氏は経済面でのアメリカ追従の危険性を語ります。
その象徴が参加するかどうかで論争となっているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)です。
TPPは単なる貿易の自由化ではなく、この協定のメンバー間に限った自由化であり、メンバー外の国との間に差別が生じます。これは、戦後の自由貿易体制であるGATT/WTOの原則「無差別の貿易自由化」と衝突します。
本来、貿易自由化を進めるならばGATT/WTO体制の下で行うのが筋であるはずです。それでもアメリカが日本にTPP参加を迫るのは、アメリカの目的が単に貿易の自由化だけでなく、市場の開放をはじめとしたよりアメリカに都合のいい社会構造への変革を日本に強いているとも言えます。
天木氏はこの他にも、元外交官の立場からアメリカの横暴さや狡猾さに言及していきます。
防衛・経済をはじめとした様々な分野でアメリカのいいなりになってきた日本ですが、安倍政権では憲法第9条を変え、集団的自衛権の行使を可能にして軍事的にアメリカと対等になろうとしています。自衛隊にかわる国防軍の創設も憲法改正草案に掲げています。
しかし、天木さんはこの方法を、「アメリカの本質を知らない独りよがりの考え」として、軍事的に強くなることではなく、まずは不平等な内容である日米同盟(安保条約)と決別するべきだと言います。
そもそも、アメリカが自国と軍事的に対等な国を認めるはずがありませんし、アメリカは日本を対等に見てはいないのです。その証拠として、天木さんはケビン・メア元アメリカ沖縄総領事が『決断できない日本』(文藝春秋/刊)に書いた「日本が日米同盟を本当に重要と思うなら、なぜ沖縄人や日本国民に負担をがまんしろといわないのか、日米同盟を重視する態度が見えない」という一文を取り上げています。
まだまだアメリカに対する従属度が足りない。
これがアメリカの本音なのです。
本書には、元・外交官・自衛官だからこそ知りえた日本の対米政策のずさんさや矛盾が、これまで日本国民に明かされてこなかった事実の数々と共に綴られています。
新政権発足で注目される日本の対米政策ですが、歯に衣着せぬ二人の意見を読むと、マスコミが当然のように報道している“同盟国”“友人”といった日米関係だけでなく、真の関係性が見えてくるはずです。アメリカが日本を「友達」だと思っていない証拠や、安倍首相の訪米(オバマ会談)の調整が難行している舞台裏も読み取れるはずです。
(新刊JP編集部)
田母神 俊雄(たもがみ としお)
1948年、福島県郡山市生まれ。67年、防衛大学電気工学科(第15期)入学。卒業後の71年、航空自衛隊入隊。地対空ミサイルの運用幹部として部隊勤務10年。統合幕僚学校長、航空総隊司令官などを経て、2007年、第29代航空幕僚長に就任。08年、民間の懸賞論文へ応募した作品が政府見解と異なるものであったことが問題視され、幕僚長を更迭される。同年11月3日付で定年退職。同年11月11日、参議院防衛委員会に参考人招致されたが、論文内容を否定するものでないことを改めて強調した。その後は執筆、講演活動を中心に活躍。『自らの身は顧みず』(WAC)『田母神塾』(双葉社)、『田母神大学校』(徳間書店)『間接侵略に立ち向かえ』(宝島社)『ほんとうは強い日本』(PHP新書)『日本はもっとほめられていい』(廣済堂新書)『日本を守りたい日本人の反撃』一色正春との共著(産経新聞出版)など著書多数。人気のツイッターは常に上位をキープしている。
天木 直人(あまき なおと)
1947年、山口県下関市生まれ。69年、京都大学法学部中退後、上級職として外務省入省。中近東アフリカ局アフリカ第二課長、内閣安全保障室審議官、在マレーシア日本国大使館公使、在オーストラリア日本国大使館公使、在カナダ日本国大使館公使、在デトロイト日本国総領事などを経て、01年2月から駐レバノン日本国特命全権大使。03年8月末、小泉政権下、イラク戦争に反対し、外務省を解雇処分となる。その後、評論・執筆活動を続ける。日本ペンクラブ会員。23万超のベストセラーになった『さらば外務省!』をはじめ『さらば小泉純一郎!』『さらば日米同盟!』『ウラ読みニッポン』(以上、講談社)の他『イラク派兵を問う』(岩波書店)『九条新党宣言』(展望社)などがある。「天木直人のブログ―日本の動きを伝えたい―」で安倍新政権発足の日より「インターネット政党を立ち上げよう」の連載を開始している。
今こそ自主・自立した日本を取り戻す時である
第二部●田母神俊雄
日本は国力と軍事力を備えた独立国家たれ!
第三部● 天木直人VS田母神俊雄
激論! 最強の自主防衛策とは?