新刊ラジオ第1822回 「なぜ一流の人はみな「眠り」にこだわるのか?」
「寝る間を惜しんで働く」はもう古い。ベストコンディションで日中の仕事・生活を送るために必要なのは良質な眠りです。本書では、快眠術の専門家であり寝具メーカーIWATAの代表取締役社長でもある著者が、自らの研究・経験をもとに、各界の著名人やエグゼクティブも取り入れている「快眠」への知識を、一般ビジネスパーソン向けに優しく紹介してくれます。(提供・すばる舎)
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近年、「快眠」への関心が高まっているのは働き盛りの世代!
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
みなさん、睡眠はしっかりとれていますか?
僕は……あまりとれてないかも……。
同じように、最近上手く眠れてないなぁと感じている方も多いんじゃないでしょうか。
ということで、今回は知っているようで意外に知らない睡眠の知識を学べる一冊をご紹介します。
著者である岩田さんによれば、今から20?30年ほど前までは、睡眠と寝具の科学的な関係性がメディアに取り上げられることが、そもそもなかったと言います。
どういう事かというと、「なんで布団屋さんが、睡眠の研究なんてしてるの?」という状態だったんだそうです。
今だとちょっと意外ですね。
なので、当時の寝具業界は、新しい商品が出ても「柄が変わった」とか「綿の種類が変わった」というふうに、岩田さん曰く、非常に変化の少ない業界だったんだそうです。
そんな中、岩田さんは早くから「睡眠」というものに注目し、「睡眠を知らずに寝具を作ってはいけない」という思いのもと、研究を重ねてきました。
その研究は、数多くのヒット商品に結びついていったといいます。
そして、ここ最近、寝具を買うお客様に、ある変化が訪れたようです。
以前は、機能性にすぐれた商品を購入するのは、価格のせいもあってか、中高年のお客様が多かったそうなのですが、最近は、30?40代のエグゼクティブの方が増え、一般のサラリーマンの方でも「睡眠にはとことんこだわりたい」と一点豪華主義に買われていくケースも多くなってきたんだそうです。
また、快眠コンサルタントとしての活動の中でも、働き盛りの世代に需要が多く、そういった世代の方々の睡眠への関心の高まりを感じるようになってきたとも言います。
つまり、今、「睡眠の質」「快眠」というものが、働き盛りのビジネスパーソンの間で注目されているのです。
◆著者プロフィール 著者の岩田アリチカさんは1983年に、家業である京都の老舗寝具メーカーIWATAに入社。 1988年から、独学で睡眠に関する研究を始め、その後、日本を代表する睡眠の研究者の方々に師事して、睡眠に関する研究と、寝具を作り・売るという民間産業の両輪で活躍されてきた方です。
レム睡眠とノンレム睡眠の周期は90分……ではなかった!?
そんな需要を受けてか、こちらの本は、快眠コンサルタントである岩田さんが、読者である僕らに「正しい睡眠の知識」を教えてくれる本になっています。
で、今、僕は「正しい」と敢えて言ったのですが、これはなぜかというと……。
この本を読んで、僕は、睡眠について知っているつもりだったけど全然知らなかった。
ということを、思い知らされたからなんです。
例えば、こんなお話。
レム睡眠とノンレム睡眠。
聞いたことがある方は多いと思います。
簡単にご説明すると、人間は睡眠をとる際、このレム睡眠とノンレム睡眠を切り替えながら眠っています。 ノンレム睡眠は深い眠りなので、このタイミングで起きると、寝覚めが悪い。
レム睡眠の際に起きると、寝覚めが良い。
そして、レム睡眠とノンレム睡眠の切り替え周期は90分なので、90分の倍数で目覚ましをセットすれば、気持ちよく目覚めることができる!
この知識、どこかで見聞きしたことがあるという方も多いでしょう。
しかし、この説は現在否定されているそうです。
え!?と思いましたね。
今まで信じていたことは何だったのか、と。
実は、レム睡眠とノンレム睡眠の周期は70分?120分で、この周期を一晩に3?6回繰り返すのだそうです。
そして、90分というのはこの平均値に過ぎず、実際の睡眠の周期は個人差があり、さらに季節、昼間の過ごし方、寝室や寝具、光、音など環境の影響を受けて、変わるのだそうです。
つまり、周期は人によって違うし、同じ人でも日によって違う、という事なんですね。
言われてみれば、それはそうだ、と唸りました。
人間は生き物ですからね、こういったズレというものは当然あるでしょう。
では、気持ちよく目覚めるにはどうすればいいのか?
岩田さんによれば、まず自分の睡眠パターンを把握することが大切なのだそうです。
何時間眠るとスッキリするのか?これにも個人差があるので、自分に最適な睡眠時間を見極めようということですね。
でも、実は、この本で岩田さんが一番強く主張しているのは、「睡眠のリズム」でした。
つまり「毎日、寝る時間と起きる時間をほぼ同じにすること」これが大事なんです!
さらに言えば、絶対に死守したいのは起床時間!起きる時間の方だとも言います。
多少、寝る時間が遅くなっても、起きる時間は常に一定にしてほしい。
休日でも同じ時間に起きるようにしてほしい、ということなんです。
これはなぜかというと、起きる時間がズレると、睡眠のリズムもズレてしまうから。
睡眠のリズムがズレてしまうと、気持ちも体も時差ボケ状態のまま、その日を過ごすことになってしまうのだそうです。
皆さんも、眠くて体がだるい、今日はなんか調子がでないなぁという経験があると思います。
その原因は「睡眠のリズムがズレているから」だったのですね。
この辺りの詳しい説明は、是非、本書を読んでみて下さい。
知っているようで、意外と知らなかった!という点が、必ず一つ二つ見つかると思いますよ。
パフォーマンスを上げるため、正しい睡眠の知識を!
さて、ここで少し、タイトルについて触れたいと思います。
「なぜ一流の人はみな「眠り」にこだわるのか?」
そう、先ほども少し申し上げましたが、岩田さんの経験上、経営者などエグゼクティブの方々は、「睡眠」にこだわりを持っているのです。
例えば、こんなデータがあります。
日本大学医学部の内山真(うちやま・まこと)教授の研究によると、睡眠不足からくる作業効率の低下や事故などによる経済的損失は、年間約3兆5000億円にものぼるのだそうです。
このうち、作業効率の低下だけでも約3兆664億円の損失になるというのだから、驚きですね。
つまり、睡眠不足は仕事のパフォーマンスを下げてしまう。
このことをエグゼクティブの方々は、すでに気付いているのでしょう。
僕の読書経験でも、一時期、著者の1日のタイムスケジュールを公開するのが流行っていた時期があったのですが、皆さん6?7時間の睡眠時間と、5時?7時の起床時間で生活している方が多かった記憶があります。
十分な睡眠時間と、早起き、という事ですね。
本書の中にも、それを証明するデータが掲載されていました。
こちらのデータです。
ビジネス誌『プレジデント』が、読者500人にアンケートをとった結果によると、朝型のほうが、年収が多い傾向が顕著に見られたとのこと。
さらに、年収400万円未満は朝型が3割程度ですが、年収1400万円クラスになると6割以上が朝型だったのだそうです。
岩田さんによれば、「睡眠はリズムが大切であり、早寝早起きは必ずしも必要ではありません。
しかし、1日の限られた時間の中で、少しでも早くスタートダッシュを切るためには、早寝早起きが習慣になるに越したことはありません」とのことです。
では、そろそろまとめに入りましょう。
快眠コンサルタントの岩田アリチカさんが書かれた、こちらの本。
「睡眠」に関しての正しい知識と、ベスト・コンディションで1日を過ごすための「快眠」について、語られています。
特に、本書の3章では「最高の眠りを手に入れるための環境設定」と題して、運動や食事、入浴、寝室の環境、寝具など、具体的な環境づくりに触れられていて、すぐに生活に取り入れることのできる知識が満載です。
また本書の5章は「睡眠リズムを整えていく2週間プログラム」と題して、本書で語られている内容を実践するために、現在の自分の睡眠パターンを分析して最高の状態に持っていくプログラムが用意されています。
いわば実践編ですね。
このように、単なる知識だけでなく、すぐに皆さんの生活に活かせるように工夫された一冊に仕上がっていますので、眠りに関するお悩みをお持ちの方は是非読んでみて下さい。
また、常にベストコンディションで仕事をする一流のビジネスパーソンに憧れる方も、「睡眠」は休みではなく「仕事への充電時間」だ!と意識を切り替えるために、読んでみると良いと思います。
ただ、最後に一つだけ。
この本の最後に岩田さんは「パーフェクトな眠りを求めすぎないことも大切」と言っています。
意気込んでしまうと、それが不眠の原因になってしまうこともあるからなんだそうです。
ですので、無理のない範囲で、この本に書いてあることを一つでも試してみようかな?そんな読み方でもOKなんです。
皆さんの睡眠が充実するために、翻って、皆さんの生活が充実するために、こちらの本、万人にオススメいたします。
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