新刊ラジオ第1820回 「一流ビジネスマンは誰でも知っているヒットの原理 売れるプラン作成の基本」
日本屈指の高収益企業キーエンスに10年間勤め、コンサルタントとして独立した著者が語る「ヒットを生み出すプランの作り方」。重要なのは「トレンド」と「ニーズ」を正しく捉え、正しく分析し、プランに取り入れることなのです。各種企画立案や提案営業に携わる方に強くオススメしたい一冊です。(提供・日経BP社)
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ヒット商品を生み出す秘訣はズバリ「深いプランニング」にあり!
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
みなさんは今、世の中で何が流行っているか捉えていますか?
企業に勤めている方はそこから、今売れる商品やサービスを考えていかなければなりません。
今回はそんな方にオススメ出来る、ヒット商品を生み出すプランの作り方を教えてくれる本をご紹介します。
まずは著者の高杉さんが勤めていた日本屈指の高収益企業・キーエンスについてご紹介したいと思います。
キーエンスは大阪に本社を置く、センサーなどの製造・販売をするメーカーで、ここ数年、売上高営業利益率が50%を超える、日本屈指の高収益企業なんです。
高杉さんは、ここで10年間働いていました。
なぜ、キーエンスはこのような高収益を続けられるのか?
この問いに、高杉さんはこのように答えています。
「プランの深さが違う」と。
これはつまり、商品の企画立案などの完成度が高いという事です。
キーエンス退職後、高杉さんはコンサルタントとして独立するのですが、そこで様々な企業の企画資料などを見せてもらい、このことに気付いたと言います。
つまり、キーエンス以外の企業は「プランが浅かった」ということに、退職してから改めて気付いたわけなんですね。
そこで本書では、この「深いプラン」=「良いプラン」「一流のプラン」の立て方を、基本から説明し、その中で、タイトルにもある「ヒットの原理」を教えてくれます。
では、
「深いプラン」「浅いプラン」ってどういうことか?
「良いプラン」にするにはどうすればいいのか?
その答えをいきなり紹介してしまいましょう。
高杉さんが、プランを良くするために特に重要だと考えているのは「トレンド」と「ニーズ」なのです。
「トレンド」というのは、世の中の大きな傾向のこと。
流行ともいわれますよね。
「ニーズ」というのは、そのまま「顧客が求めていること」ですね。
この「トレンド」と「ニーズ」をプランの中にしっかりと取り入れていくことが、実は「ヒットの原理」だと、本書では説明されています。
なんだ、当たり前じゃないか?と思った方、いませんか?
ですが、本書を読んでいくと、この「トレンド」や「ニーズ」について、僕らは普段どんなに浅く考えていたか?ということが分かってくるかもしれませんよ。
この「トレンド」と「ニーズ」の説明に際して、高杉さんは本書で、まず「コンビニコーヒー」を具体例に挙げて説明してくれます。
そこをちょっと見てみましょう。
◆著者プロフィール 1969年大阪生まれの高杉康成さんは、神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA)後、中小企業診断士、そして岡山県立大学地域共同研究機構客員教授となります。 日本屈指の高収益企業キーエンスに入社しからは、ソリューション営業に従事し、そこで数々の社内表彰を受けました。 その後、分析力と発想力を評価され、本社の新商品企画立案グループに抜擢されます。そこで企画立案した商品の中には、世界のデファクトスタンダードになった大ヒット商品もありました。 キーエンス退職後、新規事業や新商品開発、収益力改善などの「価値づくり」を専門とした経営コンサルタントとして独立した高杉さんは、中小企業から大企業まで、さまざまな業種の新規事業・新商品開発を中心にアドバイスを行い、ヒット商品を連発します。ハイテクセンサーのような感度で物事を捉える深い洞察力と、高速CPUのような速さで課題抽出を行う分析力によって、新規事業、新商品開発を成功に導く実戦的な方法論を指導されている方です。 主に、質の高い高付加価値ビジネスを軌道に乗せていく「勝ち筋戦略」を得意としています。
コンビニコーヒーをヒットさせる追い風となった3つのトレンド
今現在、様々な大手コンビニチェーンが独自に販売しているコンビニコーヒー。
年間の市場規模が約1700億円といわれる巨大ビジネスになっています。
(ということはつまり、年間17億杯ものコンビニコーヒーが売れているんですね!)
2012年後半に登場してから、3年足らずで、一躍巨大市場を作り出したヒット商品といえるでしょう。
ですが実は、このコンビニコーヒー30年前、1980年代前半にも売られていました。
中でもセブンイレブンのコンビニコーヒーはそれなりにヒットはしたのですが、「サイフォン式で作って小分けをする」「作り置きをして注文が入ったら提供」「1時間ごとに作り替える」という方式が上手く定着せず、結局やめてしまったのです。
30年前と3年前、同じ業種で同じような商品を売ったのに、なぜ3年前は大ヒットとなったのか?
この答えは、3年前は「コンビニコーヒーをヒットさせる追い風トレンド」があったからなのです。
現在のコンビニコーヒーの売り方は、みなさんご存知のように、「レジでカップを買って、それをコーヒーマシンのところへ持っていって、自分で注ぐ」という方式ですね。
この売り方に、3つのトレンドが追い風となっているのだというのです!
1つ目は「時短トレンド」。
時間をかけずにすばやくモノやサービスを買いたいというトレンドです。
コンビニエンスストア自体がまさに時短トレンドの象徴ともいえますが、その他にも冷凍食品の消費量や、「スピード」を売りにした商品・サービスは30年前よりも現在の方が多く存在していますよね。
行列のできるコーヒーショップより、すばやく買えるコンビニコーヒーはこのトレンドにズバリ当てはまっています。
2つ目は「セルフトレンド」。
文字通りセルフ方式の商品・サービスを求めるトレンドです。
セルフガソリンスタンドは全国に普及しましたし、「はなまるうどん」や「丸亀製麺」に代表されるセルフ方式のうどん店も、全国各地に出店しましたね。
このようにセルフ方式のサービスを違和感無く受け入れられるトレンドが、同じくセルフ方式であるコンビニコーヒーにも追い風となったのです。
そして3つ目は「香りトレンド」。
僕は本書を読んで「そんなトレンドがあったのか!?」と驚いたのですが、「衣類にほのかな香りをつけてくる洗剤」とか「アロマテラピーと一体になった加湿器」など、香りが付加価値を生み出す商品が、今、売れているそうです。
そういえば、30年前には「アロマテラピー」なんていう言葉は通じませんよね。
コンビニコーヒーも、コーヒーマシンに自分でカップをセットし、コーヒーを注れる際、心地よいコーヒーの香りがしてきます。
香りに慣れ、香りを楽しむことを覚えた消費者は、コンビニコーヒーが作り出す、香りの価値も含めて購入しているのだそうです。
と、以上のように、コンビニコーヒーは「時短トレンド」「セルフトレンド」「香りトレンド」という3つのトレンドの追い風をうけたからこそ大ヒットした。
このように高杉さんは語ります。
このほかにも、本書では「コンビニのロールケーキ」「電気ケトル」「布団クリーナーのレイコップ」などの具体例を挙げて、トレンドやニーズについて解説していますので、そういった商品がなぜヒットしたのか知りたい方は、本書の該当部分を読んでみてください。
「顧客のニーズを掴む」実践的な戦略を学ぶことができる一冊
さて、話をちょっと概念の方に戻しましょう。
良いプランをつくるのに重要なのは「トレンド」と「ニーズ」でしたよね。
このトレンドとニーズの関係について、高杉さんはこのように述べています。
「トレンドというのは、社会の変化に伴って、消費者のニーズが変化し、それに応じた特徴を持つ商品・サービスを求めるようになった傾向を意味する」
と。
すなわち、世の中全体が求めているニーズを、トレンドあるいはマクロニーズという言い方をしても良いとのこと。
対するニーズに関しては、「個々の人たちの具体的なニーズ」「隠れたニーズ」という言葉を、本書ではよく使っているので、つまるところ、トレンドもニーズもどちらもニーズということになります。
ポイントはマクロ的かミクロ的かという部分のようですね。
さて、ここまでで「トレンド」が実際にヒット商品を生み出す追い風となる事を説明してきましたが、本書ではこのあと、実際の「トレンドの捉え方」や、その捉えた情報をどう扱うか、また、その情報をどのように掘り下げ・展開し、プランの中に取り入れるか、さらに、こういったニーズを習慣的に分析する手法について解説していきます。
僕は本書を読んで、「顧客のニーズを捉える」というごく当たり前に思えることが、まだまだ深く分析できていなかったんだなぁ、と強く感じました。
また細かいところですが、「自分たちの作れるモノではなく、市場・顧客に求められるものを提供しなければならない」という言葉には、ガツンとやられました。
思い当たる節があるからです……。
僕はまだまだ市場や顧客……いわゆるお客さんを見ていなかったのかも……と自省するきっかけを与えてくれた本書に感謝いたします。
さて、皆さんは、この本を読んだら、どう感じるでしょうか?
高杉さんが本書で書かれた内容は、高杉さん自身が学び・用いてきた、実戦的な戦法・戦略です。
モノやサービスの企画立案に携わる人であれば、この本は即座に役立つと思います。
またマーケティングや営業に携わる方も、この本を読むと、市場・顧客のニーズを掴むことがどれだけ重要かが分かりますし、その具体的な収集方法も分かります。
最後に高杉さんの言葉を引用しましょう。
「情報を制する者はビジネスを制する」
情報化社会でスピードの速いビジネス現場において、有用な一冊です。
ぜひ、お手にとってみて下さい。
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