だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1763回 「しんでくれた」

「いただきますって、なぜ言うの?」
「食べるということは、いのちをいただくこと」
昨今見直されている食育の原点とも言える、谷川俊太郎の詩「しんでくれた」が詩の絵本となりました。
今回はなんと、谷川俊太郎御本人の肉声による「朗読」と「インタビュー」もお聴ききできます。

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概要

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

今回紹介する本「しんでくれた」は「谷川俊太郎」さんの詩に、「塚本やすし」さんが絵を添えることによって創られた絵本です。

この「しんでくれた」がどういう詩かというと、「私たちは死んでくれた色々な生き物を食べて生きている」という現代風に言うと食育につながる詩になります。

今回この読む新刊ラジオでは割愛させて頂いておりますが、なんとラジオ本編内では谷川俊太郎さんご本人による「しんでくれた」の詩の朗読と詩に対するインタビューの音声が流れております。

是非テキスト版だけではなくラジオの方を聴くこともおすすめさせて頂きます。

さて、タイトルにもなっている「しんでくれた」。

ここだけを聞くと、少しギョッとしてしまう方もいるかもしれませんが、この詩の絵本は力強く真っ直ぐに我々が忘れてはいけないテーマを詩っています。

谷川さんご自身は、「この詩はわりと元気よく読むことにしている」と話しています。

この詩が「死」を見つめるだけでなく、「生きる」ことにつながる力強い詩だからではないかと思います。

そしてこの詩の絵本の「絵」も谷川俊太郎さんの朗読に負けない力強さがあります。

シンプルな構図で直接芯に語りかけてくるようです。

絵本の前半分に出てくる、牛・豚・鶏・魚達は皆まっすぐと読者を見据えています。

その視線に何を感じるかは読み方によってそれぞれだと感じます。

◆著者プロフィール 谷川 俊太郎 1931年、東京都生まれ。詩人。 1952年、第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。 以後、詩作のほか、翻訳、脚本、絵本など、さまざまな分野で活躍する。 訳詩集『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、詩集『日々の地図』で読売文学賞を受賞。 著書に『ことばあそびうた』『もこ もこもこ』『いちねんせい』『子どもたちの遺言』『かあさん どうして』など多数。

塚本 やすし 1965年、東京都生まれ。 絵本作家。 主な絵本に『このすしなあに』『はしれ!やきにくん』『おでんしゃ』『はやくおおきくなりたいな』『アイススケートペンギン』『せんそう 昭和20年3年10日 東京大空襲のこと』、谷川俊太郎氏の詩の絵本『そのこ』など、多数。 エッセイに『猫とスカイツリー 下町ぶらぶら散歩道』

まとめ

最近の小さな子の中には、「魚はスーパーに置いてある「切り身」の状態で海で泳いでいる」なんて信じている子もいるようで、こういった「死」に関する事柄は昨今の社会では考える機会が減ってきているように感じます。

ですが我々が「生きて」いるからには必ず傍らに添っていなければいけないテーマなんです。

生きているからには食べなければいけない。

食べるということは食べた生き物が「しんでくれた」ということ。

人間の命は他の多くの生き物の命で出来ているということ。

それは、あたりまえのことです。

でも、あたりまえだからといって忘れてはいけないことです。

児童書業界ではここ数年、『いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日』や『ある精肉店のはなし』など、これまでタブーであったテーマの本が数多く出版されるようになりました。

谷川さんはそのずっと前に「しんでくれた」の詩を書き、子どもに事実をゆがめず伝えようとされていたんですね。

ご飯を食べる前には「いただきます。」

ご飯を食べた後には「ごちそうさまでした。」

手を合わせて行う食事の前後の挨拶を、もう一度見直すことが大切なんだなと、ふと感じました。

皆様の中で、小さなお子さんをお持ちのお父さんお母さんがいましたら、是非この詩の絵本を読ませてあげてください。

また読ませてあげるだけではなく、お父さんお母さんが朗読してあげてください。

声に出してこの絵本を読むと、死んでくれた生き物の分まで生きよう、という思いが自然にわいてくるように思います。

お子さんは今すぐ理解できないかもしれませんが、ご両親の肉声と絵本の絵のビジュアルで何度も読み聞かせて上げることで、いつかどこかでそのことを思い出し「命を頂く」という事を考えるきっかけになると思います。

また、お父さんお母さん自身も何度も読み聞かせて上げることで改めて「命を頂く」ことを考えてみるとよいかもしれませんね。

しんでくれた

しんでくれた

しんでくれた

「いただきますって、なぜ言うの?」
「食べるということは、いのちをいただくこと」
昨今見直されている食育の原点とも言える、谷川俊太郎の詩「しんでくれた」が詩の絵本となりました。
今回はなんと、谷川俊太郎御本人の肉声による「朗読」と「インタビュー」もお聴ききできます。