だれかに話したくなる本の話

意外に知らない 転職市場の厳しい現実

転職が当たり前になった今、「勤めている会社でいかに出世するか」だけでなく、「自分の人材としての価値をどう高めていくか」も大切な視点となる。

『キャリアロジック 誰でも年収1000万円を超えるための28のルール』(実業之日本社刊)は、転職市場にまつわる知られざる実情を明かすとともに、他社から求められる、価値のある人材になるために必須のルールを解説する一冊だ。

今回は著者の末永雄大さんにインタビュー。転職を取りまく現実と、その現実に対処するために知っておくべきこととやるべきことについてお話をうかがった。

■多くの人は転職市場の厳しい現実を知らない

――『キャリアロジック 誰でも年収1000万円を超えるための28のルール』では、「転職市場は出来レース」「年齢制限という現実」など転職をとりまく厳しい現実が明かされています。まず本書を書いたきっかけについて教えていただきたいです。

末永:私は転職支援と月間40万人の読者を抱える「すべらない転職」という転職にまつわる情報発信を行うメディアを運営する会社を経営しているのですが、その活動の中で、転職をする方の中には、優秀で仕事ができるのに、転職市場の「ルール」を知らないがゆえに感覚的に転職先を選んで失敗してしまう方がすごく多いことに気づいたんです。

そのことを否定するつもりはありませんが、仕事選び、会社選びは人生におけるインパクトが大きいところなので、もっとキャリアについてのリテラシーを高めていただくことで、より良い選択ができるようになるのではないかと考えたことが、今回の本につながりました。

――学生の時の就職活動と転職活動はまったく異なるものだと指摘されていましたが、就活時代にやっていたことをそのまま転職活動でもやって失敗してしまうケースは多いんですか?

末永:多いですね。私たちが転職エージェントとしてかかわらせていただく方々は20代から30代の方が多いのですが、たとえば「OB訪問や説明会はあるんですか?」と質問される方もいますし、新卒と同じ感覚でどんな企業でもエントリーできると思っている方もいます。たくさんの会社に大量にエントリーする方もいますし。

――まさに就活のやり方ですね。

末永:就活は半年から1年くらいの期間があるので、30社~40社エントリーできますが、転職って現職で仕事をしながらやるものなので、現実的じゃないですよね。

それと、転職市場で必要とされるかどうかは、一社目の経験である程度決まってしまっていて、どんな会社にもエントリーできるわけではないんです。そのあたりのことをわからずに行動しても、なかなかうまくいかないんです。

――となると、今回の本を読んでほしい人は、今「一社目」にいる方々ですか?

末永:それはそうなのですが、学生の方や、就職活動をしている方にも読んでいただきたいです。

「ファーストキャリア(一社目の経験)」の重要性は徐々に知られてきていて、学生の方も「自分の市場価値を意識したファーストキャリアを…」という人が増えてきているのですが、よく意味を把握せずイメージで言葉を使っているといいますか、間違って理解しているケースが少なくありません。そういう学生の方にも参考にしてもらえるように書いています。

付け加えるなら、今一社目の会社で働いている方で、特に転職を考えているわけではないけども、「自分は転職できるのかな」「今のままでいいのかな」と考えている人に届けばいいなと思っています。「転職本」ではなく「キャリア戦略本」として書いたので。

表紙

――「自分が他の会社で通用するのか」というのは多くの人が考えるところですからね。

末永:そうですね。どの業界のどの職種でどういう経験を積んだら人材としての価値が上がる、というのは、ある程度「出来レース的」に決まっているのですが、あまりそれについて言う人はいなくて、抽象化された情報がないんです。

キャリアについては多様性ばかり広がる一方で、選び方についての知識がないという状況だといえます。

――どうして誰もキャリアの中での人材価値の高め方について言わないのでしょうか。

末永:そもそも知っている人がいないというのがあります。学校の先生が教えてくれることではないですし、今の20代30代の方の親も、世代的にまだ終身雇用で社内昇格だけを考えてきた人が多いです。

だからこそ転職エージェントを含めた人材業界があるわけですけど、言葉を選ばず言うならこういう業界は情報の非対称性を利用して儲けてきた業界です。つまり、転職やキャリアについての知識がない「素人」と企業を、それらしい営業トークでマッチングさせてお金をもらうというビジネスモデルなので、個人がキャリアリテラシーを高めることについて、利害が一致しなかったんですよね。

――末永さんはそうした現状に問題意識を抱いていたんですか?

末永:そうですね。私は最初リクルートに入って、中途採用支援をしていたのですが、当時は個人のキャリアサポートではなくて、法人営業をやって、企業の人事担当者や経営者と、「どんな人材を採用すればいいか」というコンサルティングをしていました。

ですが、分業制なので、こちらがどんなに企業と一緒になって「ほしい人材」を定めても、応募してくるのは社内のキャリアアドバイザーが推薦した人なんですよ。正直、面接に同席していて「もうちょっと下調べしてきてよ…」と思う方もいました。

それでも内定が出てしまったりするのですが、ミスマッチで定着しないで辞めてしまうことも多かった。となると、本人のキャリアにも傷がつきますし、企業側も困るわけです。そういう現状を変えるためには、やはり個人がキャリアリテラシーを身につけるしかないんだろうなという思いはありました。

(後編につづく)

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